山といえば川 #1

 

Online Exhibition

山森菜々恵 山といえば川

2020. 5. 18 Sat – 31 Sun

at  sklo.jp

 

#1

{ prologue   }

 

山といえば川。

ある物に対して一つ言うことがあれば、

もう一つ、言えることがある。

何かは何かの代わりになることができ、

別の何かになることもできる。

それについて考えることは、実現した可能性に対して、

別の可能性を考えることでもある。

 

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石川県内での新型コロナウイルス感染拡大が一気に加速した4月頭~中旬ごろ、会場に人を招くようなかたちでの展覧会を開くのはもう絶望的だろうと思い、SKLoのお二人と少しやりとりをした。結果として展示空間を作ることをやめ、オンラインでのみ展示を見せる方向に舵を切ることとなった。もともと全然固まっていなかった展示のプランの中で、唯一確定要素としてあったことは、腰を据えてゆっくりと作品を見たり文章を読んだりしてもらえるような空間づくりや仕掛けをするということだけであったが、突然それらは、目標とすべきことではなくなってしまった。

オンラインでの展示は、作品を写真に撮って見せて、こうして書いている文章を載せて、というようなベーシックな感じで行う予定になった。普段の空間を使った展示では、一つしか存在していない作品をあちこちに配置することはできないが、オンラインの展示では一つの作品を複数枚の画像に登場させることができる。ある場所、またはあるものの隣に置いた作品を、また別の場所、別のあるものの隣に置いたりすることができるのである。どこに置かれるのかによって、また何と隣り合うかによって、作品が与える印象も担う役割も変わる。

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新型コロナウイルス感染症の流行に対して喜ばしく思う気持ちなど全くない。収束後の未来を思って明るい気持ちになることもない。もしこれをきっかけに良い変化が訪れることがあったとしても、代償が大きすぎて素直に喜ぶことなど不可能だ。一人の人間として、私が素朴に思っていることは、この出来事から得るものなど何もなくても良いからとにかくなるべく早く収束してほしい、ということに尽きる。しかし、今置かれているこの状況を前向きに捉えることはできなくとも、それによって形を変えることを余儀なくされた展覧会については、前向きに捉えることもできるのである。

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ゆっくりと作品を見たり文章を読んだりしてもらえるような空間づくりが、目標とすべきではなくなってしまったと書いたものを知人に見せたら、オンライン展示の方がむしろ家とかでゆっくり見られるのではないか、という意見をもらった。自分の生活を思い浮かべて考えると、確かにそれはその通りだと思った。しかし、ゆっくりできて、かつ快適にネットを使える場所を誰もが持っているとは限らない。家の中でなんかのんびりできない!という人もいるだろう。そもそも、ゆっくり見るということを思いついたのは、最初にSKLoに打ち合わせに行ったときであった。それは7月だったが、ギャラリーの奥のガラス張りの壁から差してくる日差しと、せせらぎ通りから風と水の音が入ってくる、静かで居心地の良い時間の経過を体感したことがきっかけであった。本当はその空間で、私が作った何なのかよく分からない、圧倒されないような存在感のものをぼーっと眺めて、普段は考えないような、何の役にも立たないような、でも少しどこかにひっかかるようなことを思いついたりしてほしかったし、私の書いた文章を、暇をつぶすような感覚で読み、ちょっと共感したりしてもらえたら、と思っていたのだ。私はそういう経験が好きだし、そういう些細な経験をきっかけにして自分の人生が作られてきたように思うので、その感覚が得られるような空間を作りたかったのである。でも、やはり今のこの状況下で、お近くにお越しの際は是非、と言うのは憚られる。

オンラインで展示を見せることによって、実際にどこかに足を踏み入れられない気持ちを埋め合わせる、というようなこともあるかもしれないが、むしろその寂しさを増長させることだって起きるのではないか、とも思う。オンライン上では、作品が写真で見ているとおりに存在しているのかは分からない。過去の展覧会記録の再掲とも区別がつかないかもしれない。オンライン展示と言いながら、会場ではイベントを開催し、大勢で集まり騒いでいないとも言い切れない。

ただ、そのようなことを感じさせるのはネガティブな行為ではないと思う。ネガティブなことを見えないように隠すことよりも、取りこぼさずに捉えようとする行為のほうがずっとポジティブなことだと私は考えている。自分の作品は、すごいものや新しいものを提供するようなものではない。取りこぼされているようなことを、鮮やかな視点で見ることができれば良いなと思っているから、作ったり、書いたり、見せたりをしたいのである。

 

2020年5月某日 山森菜々恵

 

 

山森菜々恵 Nanae Yamamori   (b.91)

主に漆を用い、立体作品を制作。乾漆でできた張りぼての構造や漆の表面処理による表情の造作を通し、遊びや代替をテーマに作品を発表している。

 

 

【Online Exhibition について】

現在の社会情勢にともない、本展では会期中、オンライン上にて作品を発表、販売する公開方法を試みます。店内での作品鑑賞をご希望の方へは、アポイント制でご案内させていただきますので、下記よりご連絡ください(*)。また状況に応じて、SKLO実店舗を営業再開する可能性もありますが、その場合でもオンライン展示の形態は継続します。

 

“展示会場” / sklo.jp

作品販売 / sklo.thebase.in

告知 / Instagram @sklo_info

 

* アポイント制での来場をご希望の方へ

ご氏名、来場希望日時、人数、電話番号をお伝えください。

markt.sklo@gmail.com

 

【今後の更新予定】

5.24, 25  “アーティストトーク” テキスト公開

5.31  会期終了