中村志野 / 由良園  てのひらに

 Exhibition

てのひらに 小さな木の箱、ガラスの器

中村志野 由良園

 

2022年7月16日 (土)  –  7月31日 (日)

 

 

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 木工の中村志野とガラスの由良園。二人の作家による、手のひらにのるほどの小さな箱や器の作品展を開催いたしました。
身近な動植物を好んでモチーフとしていることや、日本古来の素材や技法への親しさがどこか通じるお二人が創り出す、小さな箱や器から広がる豊かな世界をどうぞお楽しみください。

 


中村志野 Nakamura Shino
金沢美術工芸大学彫刻専攻卒業。東京藝術大学大学院にて仏像の保存修復を学び博士号を取得。その後、加賀市山中で挽物轆轤の技術を修めた。仏像彫刻や木工芸への造詣と洗練された技術からなる、小動物や虫、植物など身近な生き物をモチーフとした作品を作る。本展では、出産の経験から「へその緒」を入れる箱に着目し制作した、小さな木箱を発表する。

由良園 Yura Sono
倉敷芸術科学大学工芸科ガラスコース卒業。富山ガラス造形研究所研究科修了。金沢卯辰山工芸工房在籍中にガラスの器に金箔を用いて細密な模様を描き出す独自の技法を確立した。作品は酒杯や香合など手の内で眺められる小さな器が中心。箔で描かれる動植物や季節の景色が、磨き上げたガラスを透して瑞々しく輝く。本展では夏の景をテーマとし、琵琶湖の近くで自ら採取した植物などがモチーフとなる。
 

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中村志野さんの木工、由良園さんの金澄を用いたガラス。

どちらも手のひらにおさまる小ささでありながら手に取り覗き込むと、そこに広がる深遠な世界観に圧倒されます。

 

 出産を経験した中村さんが、今作りたいものとして「臍(へそ)の緒を入れる小さな箱」をあげてくださったことから、今展のテーマ“小ささ”がうまれました。

中村さんは仏像彫刻の修復家としても活動しており、 日本の木彫や手仕事を歴史的な時間軸で見て感じ、その上で自らの制作を行っていらっしゃいます。
前回の個展では身近にある小さな存在をテーマとして、小動物や虫をモチーフとした木彫刻や器を発表してくださいました。大きく流れる時間軸のなかにある小さな世界。
そして繊細な技術と優しくてどこか可笑しみのある独自の世界観から、今回の箱の数々は創り出されました。

 

 由良園さんの小さなガラスの器を彩る微細な季節の動植物は、ガラスに重ねた金澄み(すみ)を削ることで描かれています。削るからこそ細い線も真っ直ぐ力強く残せるのだとか。さらに上からガラスを重ね、研磨して透明感を出していくという気の遠くなるような製法が、類まれな美しさを生んでいきます。


金箔を用いて細やかな模様を描くという制作手法の性格から、作品そのものが小さいほうがその世界観に集中できるとは、由良さんの言葉です。
見れば見るほど呼吸すら忘れてしまい、金の模様が描く透明の世界に吸い込まれていきそうです。

 

 箱、と聞くと四角い形状が思い浮かびますが、仏像彫刻に携わる中村さんだからこそなのでしょうか、生き物を写しとった箱ものが生まれました。
神仏のそばには必ず生き物が寄り添っています。一つ一つが愛おしさで形取られた箱ものたち。彼らのいのちの息吹を感じながら、どうぞ蓋をそっと開けてみてください。

 

 由良園さんの作品には全てお箱が付いています。一点一点が由良さんによる手描きの、作品に合わせた絵柄となっています。
季節が過ぎお箱に納めてからの時も、等しく愛でられますように。

 

 

 

 

 「通常小さなものは、それに深く心をとめると、一般に大きなものよりもはるかに興味ある、愛すべきものだということである。」
「この世の小さなものに眼を注ぎなさい。そうすれば、人生は一層豊かに、満足すべきものとなるのである。」
(ヒルティ著「眠れぬ夜のために」より)

 

 

[慣用句]目を凝らす
意識をひとつの物事に集中させる。そそぎこむ。

とあります。

目を凝らす事で見えてくる世界があります。
そして目を凝らす事で広がる世界があります。

小さな掌(てのひら)の上で繰り広げられるさまざまな物語を作品から感じて頂けましたら幸いです。


SKLo 塚本美樹

 

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DM photo / interview : Kanna Ogawa    
Edit : SKLo